年内入試はどれくらいの大学が実施しているのか|まず全体像から
年内入試(総合型選抜・学校推薦型選抜)は、いまや大学入学者の半数超が通るメインルートです。文部科学省の令和7年度(2025年度)データをもとにしたリクルート進学総研の分析では、年内入試経由の入学者が全体の53.4%に達し、年明けの一般選抜(44.2%)を9.2ポイント上回りました。とくに私立大では入学者の約6割(59.3%)が年内に決まっており、「年内入試を実施していない私立大を探すほうが難しい」といえる水準まで普及しています。
比率の推移を見ると、年内入試経由の入学者は2019年 39.1%→2022年 47.0%→2025年 53.4%と一貫して伸び続けています。総合型選抜の入学者数だけでも2016年の約5.4万人から2024年には約9万8,520人へと約4万人増加し、学校推薦型選抜(約21万人規模)と合わせて、10〜12月の年内が大学入試の主戦場になっています。国公立でも総合型選抜を実施する大学は9割超に広がり、裾野の拡大が続いています。
これだけ広がると、「うちの生徒が受けられる大学はどこか」を全大学リストから探すのは非現実的です。そこで本記事では、すべての大学を列挙するのではなく、方式ごとに実施大学を整理する考え方と、最新の実施大学を確実に調べる方法を、進路指導の先生向けにまとめます。膨大な大学を効率よく絞り込むための「地図」としてお使いください。特定大学の実施有無は年度で変わるため、必ず各大学の最新要項でご確認ください。
年内入試の「4方式」を整理する|時期・評定・併願・学力比較の早見表
「年内入試を実施しているか」を一括で見るより、方式ごとに分けて探すほうが、生徒の志望や強みに合った大学にたどり着けます。年内入試は大きく4タイプに分かれ、それぞれ求める人物像も、必要な準備も、日程も異なります。まずは指導で使える早見表で全体像をつかみましょう。
方式 | 時期の目安 | 評定要件 | 併願可否 | 学力比重 |
|---|---|---|---|---|
総合型選抜 | 出願9月〜/合格発表11月〜(エントリーは6月頃から) | 課さない大学が多いが、指定する大学もある | 専願が多い(併願可の大学もあり) | 低〜中(志望理由書・面接・小論文中心) |
学校推薦型(公募制) | 出願11月〜/合格発表12月〜(校内選考は9月頃) | 「全体3.5以上」等の下限を課すことが多い | 併願可の大学がある | 中(調査書+小論文・面接、教科試験を課す例も) |
学校推薦型(指定校制) | 校内選考9〜10月/出願・合格発表11〜12月 | 大学が高校ごとに設定(比較的高め) | 専願のみ(原則1校) | 低(校内選考通過が実質的な関門) |
基礎学力型・学科試験型 | 出願10〜11月/合格発表11〜12月(年内に学力で合否) | 課さない例が多い(学力テストで評価) | 併願可の大学が多い | 高(英語+国語or数学等の教科テスト) |
共通テスト利用型 | 出願11月〜(年内)/合否は共通テスト後=年明け | 推薦型では評定要件を課す例あり | 方式による(専願指定に注意) | 高(共通テストの得点で合否) |
※時期・要件は一般的な目安です。大学・方式により異なります。必ず各大学の最新要項でご確認ください。
総合型選抜|「学びたい理由」を軸に多面的に評価
アドミッションポリシー(求める学生像)に基づく多面的評価が中心です。志望理由書・活動報告書・面接・小論文・プレゼンテーションなどで、学ぶ意欲や適性を見ます。学校長の推薦は不要で、出願資格を満たせば生徒が自ら出願できます。私立を中心にほぼ全大学が実施し、国公立でも実施率9割超まで拡大しました。評定平均を厳密に問わない大学が多い一方、下限を設ける大学もあるため、生徒の強み(探究活動・資格・部活動の実績等)が生きる方式です。
学校推薦型選抜|「公募制」と「指定校制」を分けて考える
高校長の推薦を前提とする方式で、大きく2種類に分かれます。公募制は、大学が示す出願要件(評定平均の下限など)を満たせば、どの高校からでも出願できます。「全体の評定平均3.5以上」といった基準を課すことが多く、併願を認める大学もあります。指定校制は、大学が高校を指定して推薦枠を配分するもので、専願(原則1校のみ)が条件です。校内選考を通過すれば合格可能性は高いものの、その校内選考が実質的な関門になります。指定校枠は毎年見直されるため、最新の配分状況を進路指導室で必ず確認しましょう。
基礎学力型・学科試験型|年内に「学力」で合否が出る
大学独自の教科テスト(英語+国語または数学など)で、年内に合否が決まる方式です。首都圏の私立大を中心に急増しています。たとえば東洋大学の「総合型選抜 基礎学力テスト型入試」は英語+国語または数学に事前提出の課題小論文等を組み合わせ、2027年度は11月29日試験・12月14日合格発表で、他大学との併願も可能です(2027年度入学試験要項より)。昭和女子大学・大東文化大学・立正大学・神奈川大学などでも同種の基礎学力テスト型・適性検査型が実施されます(詳細は各大学の2027年度要項でご確認ください)。評定を問わず学力で勝負できるため、一般選抜志望の生徒の「年内の押さえ」としても活用が広がっています。詳細は姉妹記事「基礎学力型・学科試験型を実施する主な大学まとめ」で整理しています。
共通テスト利用型|共通テストのスコアで年内出願
共通テストの得点を用いる方式で、国公立の学校推薦型に多く見られます。出願は年内でも、合否は共通テスト後(年明け)に出る点が他の3方式と異なります。共通テストのみ(+書類)で受けられる学校推薦型の例として、横浜市立大学・小樽商科大学・東京海洋大学などがあります(2027年度要項で確認済み。実施大学の要項は順次公表されるため、必ず最新要項でご確認ください)。共通テストは2025年度から新課程対応で「情報Ⅰ」を含む7教科21科目となり、国立は原則「情報Ⅰ」必須です。共テ利用型を狙う生徒には、共通テスト形式の演習が年内対策の柱になります。詳細は「共通テスト利用型の年内入試 実施大学まとめ」をご覧ください。
方式別|出願〜合否カレンダー(2027年度入試の目安)
年内入試は方式によって「動く時期」が大きくずれます。生徒が複数方式を組み合わせる場合、締切と発表日が重なって出願準備がパンクしがちです。方式ごとの流れを押さえ、逆算で指導計画を立てましょう。
- 6〜8月:総合型のエントリー・オープンキャンパス・出願書類準備。志望理由書・活動報告書の下書きはこの時期に着手すると余裕が生まれます。
- 9月:総合型の出願開始。学校推薦型(指定校・公募)の校内選考が本格化。評定・欠席・調査書の最終確認を。
- 10〜11月:基礎学力型・学科試験型の出願・試験。公募制推薦の出願(11月〜)。総合型の一次〜二次選考。
- 11〜12月:総合型(11月〜)・学校推薦型(12月〜)・基礎学力型(11〜12月)の合格発表が集中。年内に多くの生徒の進路が確定します。
- 1月:共通テスト。共通テスト利用型(総合型・推薦型)の合否は原則ここから。年内出願・年明け合否の方式は、共通テスト対策と両立させる必要があります。
この流れを生徒別に一覧化しておくと、出願期の「あの大学の締切はいつだったか」という確認作業が激減します。方式・締切・発表日・提出物を1枚にまとめた早見表を、生徒ごとに用意しておくのがおすすめです。
実施大学の「探し方」ガイド|候補出し→絞り込み→要項で確定の3段階
方式・科目・日程は毎年見直されるため、「どの大学が実施しているか」は①候補を広く出す → ②条件で絞り込む → ③一次情報(募集要項)で確定するの3段階で調べるのが確実です。民間の進学情報サイトや予備校の大学検索サービスなどを活用するのも良いでしょう。
手順①:公的情報と大学公式で「候補を広く出す」
出発点は公的機関と大学公式の情報です。共通テストを課す方式については、大学入試センターが公表する利用大学・教科科目の情報で横断的に確認できます。また、各大学の入試情報ページには「入学者選抜要項」(国公立は例年7月頃公表)と方式別の「学生募集要項」(夏〜秋に順次公表)が掲載され、その大学が実施する全方式を一覧できます。検索エンジンで「大学名+入学者選抜要項+2027」のように大学名・年度・方式名を組み合わせて検索すると、公式ページへ素早くたどり着けます。進路指導室に届く大学案内・入試ガイド、指定校推薦の枠一覧、大学の高校教員向け説明会も、候補出しの重要な情報源です。
手順②:生徒の条件で「絞り込む」
候補が出たら、生徒の条件で絞り込みます。絞り込みの軸は「方式(4タイプのどれか)」「評定要件」「専願・併願」「試験科目」「地域・会場」の5つです。民間の進学情報サイトや予備校の大学検索サービスを補助的に使う場合も、掲載情報が前年度のまま更新されていないことがあるため、「候補出しの補助」と割り切り、絞り込んだ結果は必ず次の手順③で確定させるのが安全です。
手順③:必ず「一次情報」で確定する
最終確認は必ず各大学公式の募集要項で行います。要項は「今年度の変更点」欄 → 出願資格 → 選抜方法・配点 → 日程の順に読むと、確認漏れを防げます。前年度から方式名・科目・配点が変わることは珍しくないため、まとめ記事や検索結果の情報のまま出願準備を進めるのは禁物です。要項の公表時期は大学・方式により異なるので、「志望校の要項がいつ公表されるか」を春のうちにリスト化しておくと、公表後すぐに確認へ動けます。
実施大学と方式が絞れたら、次は「対策」です。基礎学力型・共通テスト利用型が増え、年内でも教科の演習教材を用意する場面が急増しています。志望大学・方式が決まったあとの演習教材づくりには、指導者向けソフト「Xam(イグザム)」と「センターTen」が役立ちます。必要な問題を内容から検索し、Word出力で短時間に演習プリントへまとめられます。
- Xam:全国最大約300大学・全12科目の入試問題(一般選抜)から、大学別・分野別に同レベル・同形式の類題を抽出してテストを自動作成。基礎学力型や一般併願の対策に。
- センターTen:共通テスト+センター試験37年分の過去問から、共通テスト形式の演習教材を量産。新課程「情報Ⅰ」対策の教材づくりにも活用可。共通テスト利用型の対策に。
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絞り込みチェック項目|生徒に勧める前に確認する5点+α
ツールで候補が挙がったら、各大学の要項で次の項目を確認し、生徒別の早見表に落とし込みましょう。ここを詰めておくと、出願期の指導が大幅にラクになります。
- ① 方式:4タイプ(総合型/学校推薦型=公募・指定校/基礎学力型・学科試験型/共通テスト利用型)のどれか。
- ② 課される内容:志望理由書・面接・小論文・プレゼン/教科試験(科目)/共通テスト(科目・配点)。
- ③ 評定平均の要件:下限の有無と数値。全体か教科別か、対象学年(1年〜3年1学期など)も確認。
- ④ 専願・併願の可否:指定校は専願が原則。公募・基礎学力型は併願可の場合あり。併願先との日程重複に注意。
- ⑤ 出願・試験・合格発表の日程:締切・試験日・発表日を時系列で。他方式との重複を確認。
- +α 面接の有無:2027年度から総合型・学校推薦型で面接が原則必須化されます(後述)。オンライン面接の可否も要項で確認を。
2027年度の注意点|「面接必須化」と要項の順次公表
2027年度入試(令和9年度)に向けて、進路指導上おさえておくべき制度変更があります。文部科学省は2026年5月27日、令和9年度大学入学者選抜実施要項の変更を通知し、総合型選抜・学校推薦型選抜で「面接」を原則必須化しました。面接にはディベート・集団討論・プレゼンテーション・口頭試問・オンライン面接も含まれます。高校と緊密に連携する非公募型推薦などでは大学の判断で面接の有無を決められる例外もあり、導入が難しい区分は遅くとも2029年度選抜までに導入するとされています。背景には、一部の総合型・推薦で学力検査の配点比率が著しく高く「一般選抜の前倒し」と受け取れる事例があったこと等が挙げられています。年内入試を勧める生徒には、早い段階から面接・口頭表現の練習を組み込みましょう。
もう一点、運用上の重要な注意が「要項は順次公表される」ことです。2027年度の大学別要項は、夏から秋にかけて順次公表されます(例:東洋大学は総合型・学校推薦型等の2027年度入学試験要項を2026年7月1日に公表)。春〜初夏の段階で作った候補リストは、前年度情報にもとづく暫定版です。方式の新設・廃止、科目・配点・日程の変更が起こり得るため、公表のたびに要項を確認して早見表を更新する運用を徹底し、出願直前まで最新の要項を追いかけることが大切です。
まとめ|「方式で分けて、ツールで探し、要項で確定する」
年内入試は私立を中心に広く実施され、いまや大学進学の主流です。実施大学を探すコツは、「全大学を眺める」のではなく「方式で分けて、候補を広く出し、各大学の要項で確定する」という3段階で進めること。公的情報と大学公式を軸に候補を出し、生徒の条件(方式・評定・併願・科目・地域)で絞り込み、最後は必ず一次情報で確定する、という流れを習慣化すると効率的です。方式が決まったら、次は演習教材の準備です。基礎学力型は「基礎学力型・学科試験型を実施する主な大学まとめ」、共通テスト利用型は「共通テスト利用型の年内入試 実施大学まとめ」で具体例を整理していますので、あわせてご活用ください。制度の全体像は「年内入試とは?」、日程管理は「年内入試スケジュール2027」もご参照ください。
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※本記事のデータは2025〜2026年度時点の公表値、制度・変更点は2027年度入試(令和9年度)に関する情報に基づきます。大学別の方式・科目・配点・日程・評定要件・専願併願の別は年度により異なるため、必ず各大学の最新の募集要項をご確認ください。
出典:リクルート進学総研「年内入試拡大の実態を把握する(進学センサス2025)」、文部科学省「令和7年度国公私立大学入学者選抜実施状況」「令和9年度大学入学者選抜実施要項」、独立行政法人大学入試センター、東洋大学「2027年度入学試験要項(総合型選抜・学校推薦型選抜等)」、横浜市立大学・小樽商科大学・東京海洋大学・昭和女子大学 各入試情報 ほか

