年内入試対策

年内学力型・基礎学力型対策の授業設計|2027年度の傾向と演習計画

2026.07.06 更新日:2026.07.23
教科の学力試験で年内に合否が決まる「年内学力型・基礎学力型」の対策を高校教員向けに解説。制度の背景(2026年度の学科試験容認・2027年度の面接必須化)、入試方式、求められる学力レベル、夏からの演習計画、教材づくりの効率化まで整理します。

年内学力型・基礎学力型とは|「学力で決まる年内入試」が広がっている

総合型選抜・学校推薦型選抜は、長らく「学力以外の要素を多面的に見る入試」と理解されてきました。しかし近年は、教科の学力試験で年内に合否が決まる「年内学力型・基礎学力型」が、首都圏の私立大を中心に急速に広がっています。「推薦=学力対策は不要」という前提は、もはや過去のものになりつつあります。実際、旺文社 教育情報センターは2025年7月の入試動向分析で、東洋大学に続いて大妻女子大・昭和女子大・拓殖大・玉川大・立正大・神奈川大など、首都圏私大で基礎学力テスト型の年内入試が拡大していると指摘しています。

本記事は、進路指導の先生方に向けて、①年内学力型・基礎学力型とは何か、②なぜ増えたのか(制度背景)、③主な方式と大学例、④求められる学力レベル、⑤夏〜秋の月別演習計画、⑥授業・講習への落とし込み、⑦教材の作り方、⑧多面的評価との両立までを一気通貫で整理します。対象は2027年度入試(2026年9〜12月実施)です。合格実績などの数値は2025〜2026年度の公表値を用いています。制度・変更点は2027年度(令和9年度)入試の公表情報に基づいて掲載しています。大学別の方式・科目・日程は年度により変わるため、出願前には必ず各校の最新要項でご確認ください。

なぜ「年内学力型」が増えたのか(制度の背景)

最大の転機は、2026年度入試からの学科試験の「2月1日より前」実施の正式容認です。文部科学省が公表した令和8年度大学入学者選抜実施要項では、総合型・学校推薦型選抜で教科・科目に係る個別テスト(学力検査)を2月1日以前に実施する場合、調査書などの出願書類に加え、小論文・面接・実技・エッセイ・口頭試問・ディベート・集団討論・プレゼンテーション、活動報告書・大学入学希望理由書・学修計画書などの評価方法と「必ず組み合わせて丁寧に評価する」ことを条件に認める、と整理されました。

これは、2025年度入試で一部の大学が2月1日以前に学力検査を課していた実態を、大学入学者選抜協議会での協議を経て条件付きで容認した形です。裏を返せば、「学力検査を年内に課してよい」というルールが明文化されたことで、私大が年内に学力型入試を設計しやすくなり、方式が一気に増えたということです。

もう一つの背景が年内入試そのものの主流化です。リクルート進学総研「進学センサス2025」によれば、2025年3月卒の入学者のうち年内入試での合格進学者は53.4%(年明け入試44.2%)と、年明けを上回っています。年内入試比率は2019年39.1%→2022年47.0%→2025年53.4%と上昇を続け、私立大では入学者の約6割(令和6年度59.3%)が年内入試経由です。「多面的評価だけでは志願者の学力が測りきれない」という大学側の課題意識と、年内で学生を確保したい経営面の事情が重なり、学力を年内に測る方式が広がっています。

加えて2027年度入試からは、総合型・学校推薦型選抜で面接が原則必須化されます(ディベート・集団討論・プレゼン・口頭試問・オンライン実施を含む)。これは、一部の大学で個別テストの配点が著しく高く、実質的に学力だけで合否が決まる「一般選抜の前倒し」と取れる事例があったことへの是正です。つまりこれからは、「基礎学力+多面的評価(面接など)」をセットで対策するのが標準になります。学科試験対策だけを切り離して指導するのではなく、面接・志望理由書の指導と束ねて設計する視点が欠かせません。

主な方式と大学例(2027年度)

年内学力型・基礎学力型は、名称も設計も大学ごとに異なります。おおまかに、①大学独自の基礎学力テスト型(英・国/英・数の2教科が中心)、②共通テスト利用型(共通テストの得点を年内選抜で使う)、③適性検査・基礎力評価方式に分けて捉えると整理しやすくなります。以下は2027年度入試の公表情報にもとづく例です(要項未公表の部分はその旨を明記し、前年度実績を参考として記載)。詳細は各大学の最新要項で必ずご確認ください。

大学(方式名)

主な試験科目

併願

時期の目安

東洋大学(総合型選抜 基礎学力テスト型入試【併願可】)

国語または数学+英語の2教科+事前課題小論文・調査書等(英語外部検定利用可。2027年度は書類評価の配点を計50点に拡充し250点満点に変更)

併願可

2026年11月29日試験・12月14日発表

昭和女子大学(総合型選抜入試〈基礎学力テスト型〉※2027年度から総合型選抜に区分変更)

英語+国語または数学(マークシート方式・外部検定で英語免除可)

併願制

2026年11月22日試験・12月3日発表

大東文化大学(総合型選抜 基礎学力テスト型)

科目・配点は2027年度要項の公表待ち(参考・2026年度:英語+国語または数学 各60分・マーク式+調査書・小論文)

併願可(2026年度実績)

2026年12月13日試験・12月24日発表(全国16会場・面接なし)

拓殖大学・立正大学・神奈川大学・大妻女子大学 ほか

基礎力評価方式・基礎学力テスト型(立正大学は2027年度新規導入・面接あり)・適性検査型・基礎学力型など(大学により英・国・数中心)

併願可の設計が中心(方式による)

2026年10〜11月試験・年内発表が中心

ポイントは、いずれも「2教科前後の基礎学力+書類・小論文など」を組み合わせ、年内に合否を出す設計が主流だということです。とくに東洋大学のように併願可の方式は、一般選抜と並行して受験でき、生徒にとって早期に一つの合格を確保しやすい選択肢になります。指導側は「どの生徒に、どの大学の、どの方式を、いつ勧めるか」を、募集要項の科目・日程・併願可否から逆算して設計することが重要です。

なお、共通テスト利用型の年内選抜では、共通テストの得点で判定するため、大学独自の学科試験対策より共通テスト形式そのものの演習量が問われます。基礎学力テスト型(大学独自問題)と共通テスト利用型は、対策の中身が異なる点に注意してください(詳しくは関連記事共通テスト利用型の総合型・推薦とは?」「基礎学力型・学科試験型を実施する主な大学まとめもご覧ください)。

要項公表待ちの大学(公表され次第、順次追記します)

  • 大東文化大学(総合型選抜 基礎学力テスト型):2027年度の日程・会場(2026年12月13日試験・全国16会場)は公表済み、科目・配点は要項の公表待ちです。
  • そのほか2027年度要項が未公表の大学は、公表を確認のうえ追記します。

求められる学力レベルと、対策の考え方

基礎学力型で問われるのは、難問・奇問ではなく教科書レベル〜入試標準レベルの基礎〜標準問題が中心です。私大の基礎学力方式は文系で英語・国語、理系で数学・英語または理科・英語といった2教科前後の基礎的な学力を測る設計が多いです。一般的な入試問題集でいえば、多くの大学で「基礎レベル〜共通テストレベル」、上位学部で「私大標準レベル」あたりが目安になります。

したがって指導のゴールは、「難問を解ける力」ではなく「頻出単元を、時間内に、確実に得点できる状態」に持っていくことです。次の3点を押さえましょう。

  • 出題範囲の特定:志望大学・方式の過去問や募集要項から、課される教科・単元・出題形式(マーク式か記述か)・難易度・試験時間を確認する。東洋大の英語のように出題範囲(英コミュⅠ〜Ⅲ・論理表現Ⅰ〜Ⅲ)が明示されている場合は、それに沿って範囲を絞る。
  • 基礎の徹底と取りこぼしゼロ:頻出単元の典型問題を反復し、確実に取れる問題を落とさない状態にする。基礎学力型は差がつきにくいぶん、ケアレスミスが致命傷になりやすい。
  • 多面的評価との両立:面接・志望理由書・事前課題小論文など、学力以外の対策と並行して進める(2027年度〜面接原則必須化)。学科と多面的評価は「どちらか」ではなく「両方」。

教科別の目安としては、英語=語彙・文法・標準的長文の速読、国語=評論の読解と漢字・語句、数学=ⅠA・ⅡBの典型問題の処理速度が中心になります。共通テスト利用型を併用する生徒には、これに加えて共通テスト特有の「情報処理型・資料読解型」の形式慣れが必要です。

夏〜秋の演習計画(月別モデル)

年内学力型は「9〜12月に合否」というスケジュールから逆算すると、夏休みが演習の山場になります。一般選抜のように年明けまで時間はありません。短期決戦だからこそ、月別に「何を・どのレベルで・どれだけ」やるかを明確にすることが得点力を分けます。以下は基礎学力テスト型(11月試験)を想定したモデルです。

時期

狙い

主な演習内容

7月

基礎固め・弱点の可視化

頻出単元の典型問題を教科別に演習。単元別小テストで弱点を洗い出し、志望大学の方式・科目を確定させる。

8月

実戦演習(形式慣れ)

志望大学の出題形式に合わせた演習プリントで反復。時間を計って解かせ、時間配分と取捨選択の感覚を作る。事前課題小論文の下書きにも着手。

9〜10月

仕上げ・多面的評価と並走

過去問・類題で総合演習。得点の安定化を確認しつつ、面接・志望理由書の対策を並行。共通テスト利用型併願者は共テ形式演習も積む。

11月〜

本番・次への接続

受験・結果確認。合格者は入学までの学習継続、不合格・併願者は一般選抜・共テ利用へ切り替え。

ポイントは、「志望大学の形式に近い問題」をどれだけ用意できるかです。基礎学力型は大学独自問題のため過去問が少なく、共通テスト利用型は共通テスト形式の演習量が問われます。いずれも形式の近い問題を数多くそろえることが、そのまま得点力に直結します。逆に言えば、市販の網羅系問題集をやみくもに解かせるより、「その大学・その方式に効く問題」を絞って回すほうが、短期決戦では効きます。

授業・講習への落とし込み(現場での運用)

月別計画を実際の授業・講習に落とすときは、次の運用が現実的です。

  • 「年内学力型受験者」を早期に束ねる:7月の三者面談などで方式を確定させ、対象生徒を講習クラスや個別課題でグルーピングする。方式が近い生徒は共通教材で回せる。
  • 週次の小テスト運用:単元別の小テストを毎週回し、正答率で到達度を可視化。基礎学力型は「取れる問題を落とさない」ことが勝負なので、標準問題の反復を重視する。
  • 時間を計った演習を必ず入れる:本番は制限時間があるため、8月以降は必ず時間を計って解かせる。時間内に解ききる感覚は、問題を数多く回すことでしか身につかない。
  • 多面的評価とワンセットで指導:学科の講習日と、面接・志望理由書の指導日を同じ週に配置し、生徒の中で「両方やるもの」という意識を作る。

いずれの運用でも、教員のボトルネックになりやすいのが「その大学・その方式に効く演習プリントを、毎週どれだけ用意できるか」です。ここが回らないと、計画は絵に描いた餅になります。

教材の作り方と、負担をどう減らすか

教科ごとに過去問を集め、レベル別に問題を選び、印刷・編集して演習プリントにする作業は、入手・打ち込み・校正まで含めると大きな手間です。年内学力型は対策期間が短いため、教材作成のスピードがそのまま指導の質を左右します。そこで、教材づくりを次の3ステップで仕組み化すると効率的です。

  1. 探す:志望大学の方式・教科・単元・難易度に合う問題を、内容から検索して集める。
  2. 選ぶ:同レベル・同形式の類題を選び、難易度と分量を調整して1枚のプリントに束ねる。
  3. 出す:Word等に出力して、そのまま小テスト・演習プリントとして配布・回収する。

この3ステップを、問題の入手・打ち込みなしで回せると、週次の演習運用が現実的になります。指導者向けソフトを使うと、この「探す→選ぶ→出す」を大幅に短縮できます。

▶年内学力型・基礎学力型の演習教材づくりには、指導者向けソフト「Xam(イグザム)」「センターTen」が役立ちます。必要な問題を内容から検索し、Word出力で短時間に演習プリントへまとめられます。基礎学力型(大学独自問題)はXamで同レベル・同形式の類題演習を、共通テスト利用型併願者にはセンターTenで共通テスト形式の演習を——と、方式ごとに使い分けられます。

全国大学入試問題データベースXam
共通テスト試験問題データベースセンターTen2026

共通テスト利用型への対応も忘れずに

年内入試のなかには、共通テストのスコアを評価に使う「共通テスト利用型」もあります。共通テストは2025年度から新課程に対応し、「情報Ⅰ」を含む7教科21科目体制になりました。国立は原則「情報Ⅰ」必須で、私大でも科目に組み込む動きがあります。共通テスト利用型を併願する生徒には、早い段階から共通テスト形式そのものの演習を計画的に積ませることが大切です。基礎学力テスト型(大学独自問題)と共通テスト利用型では、同じ「年内学力型」でも対策の中身が異なるため、生徒ごとにどちらを主軸にするかを整理して指導しましょう(詳しくは関連記事共通テスト利用型の総合型・推薦とは?」「情報Ⅰと新課程への進路指導対応をご覧ください)。

多面的評価との両立(2027年度〜の面接必須化をふまえて)

2027年度入試からは、総合型・学校推薦型選抜で面接が原則必須化されます。年内学力型・基礎学力型でも、学科試験に加えて面接・小論文・書類が評価に組み込まれる設計が今後さらに増えると見込まれます。したがって、学科対策だけを進めても合格には届きません。指導では次のように「両輪」で回しましょう。

  • 学科試験対策:頻出単元の典型問題を、形式の近い演習で反復。時間内に確実に得点できる状態に。
  • 多面的評価対策:志望理由書・事前課題小論文・面接を、学科と同じ時期に並行指導。オンライン面接の可能性もふまえ、話す練習と録画振り返りを取り入れる。

関連記事面接指導(面接必須化対応)」「志望理由書の書き方」「小論文指導の3ステップもあわせて活用し、学力と多面的評価をワンセットで設計してください。

まとめ

年内学力型・基礎学力型は、「推薦でも学力が問われる」時代の象徴です。制度面では2026年度からの学科試験の2月1日前実施の容認、2027年度からの面接原則必須化という2つの大きな変化があり、私大の年内学力型は首都圏を中心に拡大しています。短期決戦だからこそ、①出題範囲の特定 → ②基礎の徹底 → ③形式の近い問題での実戦演習という設計と、演習教材を素早く用意する仕組みづくりが鍵になります。面接の原則必須化もふまえ、学力対策と多面的評価対策を両輪で進めていきましょう。

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※本記事の統計値は2025〜2026年度時点の公表値を用いています。制度・変更点は2027年度(令和9年度)入試の公表情報に基づいて掲載しています。大学別の基礎学力テスト型の科目・日程は2027年度入試の公表情報にもとづき、要項未公表の部分はその旨を明記しています。方式・科目・配点・日程・併願可否は年度により異なるため、出願前に必ず各大学の最新の募集要項をご確認ください。
出典:文部科学省「令和8年度・令和9年度大学入学者選抜実施要項」、リクルート進学総研「進学センサス2025」、旺文社 教育情報センター「入試動向分析」、東洋大学「2027年度入学試験要項」、昭和女子大学・大東文化大学・立正大学・神奈川大学・拓殖大学・大妻女子大学 各入試情報サイト ほか

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