指定校推薦の校内選考は、基準や手続きが各高校の裁量に委ねられているため、「なぜあの生徒が選ばれたのか」に学校として答えられる仕組みが欠かせません。公平性を担保する鍵は、基準を事前に文書化し、複数人で判定し、結果と理由を説明できる記録を残すことに尽きます。
本記事では、文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」に基づく位置づけを確認したうえで、校内選考の流れと9月〜10月の実務、観点と重みの設計、規程の条文例・評価表・通知文例、ケース別の判断までを整理します。校内選考の運用は各校の裁量によるため、本記事の運用例は実情に合わせて調整してください。
現場の課題
基準が経験則や口頭の申し合わせに留まっていると、希望者が重なった年に説明が立たず、生徒・保護者への対応を担当者個人が背負うことになります。文書化と手続きの標準化は、生徒と先生方の双方を守る仕組みです。
指定校推薦の位置づけ|実施要項ではどう扱われているか
「指定校推薦」は、学校推薦型選抜のうち大学が出願できる高校を指定して募集する形の呼び方で、実施要項に「指定校」という語はありません。実施要項は学校推薦型選抜を「出身高等学校長の推薦に基づき、調査書を主な資料としつつ、以下の点に留意して評価・判定する入試方法」と定めており、校内選考はこの「出身高等学校長の推薦」を誰に与えるかを高校が決める手続きに当たります。2027年度入試(令和9年度)の実施要項で校内選考に関わる主な点は次のとおりです。
- 推薦要件の明示:大学は「推薦要件を可能な限り具体的に設定し、募集要項等により示さなければならない」とされています。評定平均の基準値などは大学ごとに異なるため、校内選考の入口となる資格要件は各大学の2027年度募集要項で確認します。
- 出願と合格発表の時期:「入学願書受付を令和8年11月1日以降とし、その判定結果を令和8年12月1日以降で一般選抜の試験期日の10日前まで(学校推薦型選抜で大学入学共通テストを活用する場合は前日までのなるべく早い期日)に発表する」と定められています。校内選考は11月1日の出願から逆算して組みます。
- 面接の原則実施:学校推薦型選抜では「志望する学問分野に対する意欲や適性等に係る面接(ディベート、集団討論、プレゼンテーション、口頭試問等を含む。オンラインによる実施を含む。)による評価を必ず行う」とされています。ただし、「高等学校との緊密な連携により、意欲や適性等を含め丁寧なマッチングが図られていると考えられる非公募型の学校推薦型選抜であって合格した際には入学することを入学志願者が確約して受験するものについては、大学の実情に応じて面接の要否を判断することができる」という例外も置かれています。指定校推薦はこの例外に当たる場合があるため、面接の有無は大学ごとに募集要項で確認してください。
制度全体については「年内入試とは?大学受験の新しいスタンダード」、総合型選抜との違いについては「総合型選抜と学校推薦型選抜の違い完全ガイド|比較表と指導の判断軸」をご参照ください。
校内選考の流れと9月〜10月の実務スケジュール
以下は一般的な運用例です。指定校の枠が届く時期は大学により異なるため、自校の実情に合わせて調整してください。
- 募集の公示(〜9月上旬):大学から届いた指定校の一覧(学部・学科、人数、推薦要件、面接や書類の有無)を整理し、校内募集要項として生徒・保護者に周知する。
- 希望調査(9月上旬〜中旬):希望票で第1〜第3希望と志望理由を提出させ、担任面談で入学確約の意思を確認する。
- 選考(9月中旬〜下旬):資格要件の確認→評価表による採点→選考委員会での審議→校長決裁。
- 内定と通知(9月下旬〜10月上旬):本人・保護者へ文書で通知し、内定者は出願書類の準備に入る。
- 大学出願(11月1日以降):大学の出願期間に合わせて書類を送付する。推薦書の作成手順は「推薦書の書き方|教員のための依頼対応と文例【2027年度入試対応】」で扱っています。
年内入試全体の月別の流れは「【2027年度】高3生の年内入試スケジュール完全版|出願〜合格の月別タイムライン」にまとめています。
選考基準の設計|観点と重みの作り方
選考基準は、「資格要件」と「順位づけ」の2段階に分けると設計しやすくなります。
第1段階:資格要件
大学が募集要項で定める推薦要件(評定平均の基準値、履修科目、欠席日数など)を満たすことが大前提です。学校独自の要件(入学確約の意思など)を加える場合は規程に明記し、事前に周知します。
第2段階:順位づけの観点と重み
希望者が枠を上回った場合の順位づけには、次の観点を組み合わせることが一般的です。重みは学校の教育方針で決めるものですが、実施要項で学校推薦型選抜を「調査書を主な資料としつつ」評価・判定する入試方法としていることを踏まえると、調査書に記載される学習成績(評定平均)を主とし、その他を従とする設計が一般的です。
- 学習成績:全体の評定平均を基本に、志望学部に関係する教科の評定を加味する。
- 出欠状況:欠席・遅刻・早退の合計を段階評価する。病気等のやむを得ない事情の考慮は規程に定める。
- 生活面:懲戒の有無、提出物や係活動などを担任所見で評価する。
- 活動実績:部活動・生徒会・探究活動・資格取得などを、役職や成果の事実に基づいて評価する。
- 志望の整合:志望理由と学部の学びの一致、入学確約の意思を面談で確認する。
同点時の扱いと複数希望の優先順位は、あらかじめ決めておかないと現場で紛糾します。運用例としては、同点なら「評定平均→志望学部関係教科の評定→出欠→合議」の順で判断する、第1希望で選ばれなかった生徒は第2希望の枠で改めて選考対象とする、辞退が出た場合は次点者から期限を定めて意思確認する、といった手順が考えられます。
公平性と説明責任を担保する5つの仕組み
- 規程の文書化:目的・資格要件・観点と重み・選考体制・通知・不服申し立て・記録保存を条文にし、職員会議で決定する。
- 選考委員会:校長・教頭・進路指導主事・学年主任などで構成し、担任1人の判断に依存しない。
- 事前周知:高1・高2から基準を説明し、募集の公示時に文書で示す。
- 結果通知と理由説明:文書で通知し、選ばれなかった生徒には希望に応じて評価表に基づく説明の機会を設ける。他の生徒の情報は開示しない。
- 不服申し立ての窓口と記録保存:申し出の期限と窓口(例:進路指導部)を定め、議事録・評価表・通知の控えを一定期間保存する。
そのまま使える資料
資料1:校内選考規程の条文例
一般的な運用例としての条文案です。人数・期限・保存年限などは各校で定めてください。
○○高等学校 指定校推薦に係る校内選考規程
- (目的)本規程は、大学等から本校に対して行われる学校推薦型選抜(指定校推薦)の推薦者を、公平かつ適正に選考するために必要な事項を定める。
- (対象)本規程は、本校第3学年に在籍し、指定校推薦による出願を希望する生徒に適用する。
- (募集の公示)進路指導部は、大学等から通知された推薦の枠および推薦要件を取りまとめ、校内募集要項として生徒および保護者に周知する。
- (希望の申請)推薦を希望する生徒は、所定の希望票に志望理由を添えて、期限までに学級担任に提出する。
- (資格要件)推薦候補者は、当該大学等が定める推薦要件を満たし、かつ合格した場合に入学することを確約できる者とする。
- (選考委員会)校長を委員長とし、教頭、進路指導主事、第3学年主任および校長が指名する教員で構成する選考委員会を置く。委員は、特別の利害関係がある生徒の審議に加わらない。
- (選考の基準)選考委員会は、別に定める評価表に基づき、学習成績、出欠状況、生活面、活動実績および志望の整合を総合的に評価し、推薦者を決定する。観点と配点は、募集の公示時に生徒および保護者に示す。
- (同点の場合)合計点が同じ場合は、全体の評定平均、志望学部に関係する教科の評定、出欠状況の順に比較し、なお決しないときは選考委員会の合議により決定する。
- (決定と通知)審議結果は校長が決定し、進路指導部が生徒および保護者に文書で通知する。推薦者とならなかった生徒は、本人の申し出により評価に関する説明を受けることができる。
- (辞退および繰り上げ)推薦者が辞退する場合は速やかに文書で申し出る。欠員が生じたときは、当該枠の次点者から順に意思を確認し、繰り上げることができる。
- (推薦後の取り扱い)推薦決定後に成績の著しい低下、長期の欠席、校内規律を損なう行為等があった場合は、選考委員会の審議を経て推薦を取り消すことがある。
- (不服の申し出)結果に疑義がある生徒または保護者は、通知の日から○日以内に進路指導部に文書で申し出ることができる。選考委員会はこれを審議し、文書で回答する。
- (記録の保存・改廃)希望票、評価表、議事録および通知の控えは○年間保存する。本規程の改廃は職員会議の議を経て校長が行う。
資料2:校内選考評価表(例)
観点 | 評価の材料 | 配点の例 | 採点の目安 |
|---|---|---|---|
学習成績 | 全体の評定平均、志望学部関係教科の評定 | 50点 | 評定平均を段階化。関係教科は加点 |
出欠状況 | 入学から選考時点までの欠席・遅刻・早退の合計 | 15点 | 段階評価。病気等の事情は備考に記載し委員会で考慮 |
生活面 | 担任所見、懲戒の有無、提出物・係活動 | 10点 | 担任と学年主任の2名で採点し平均 |
活動実績 | 部活動・生徒会・探究・資格の記録 | 15点 | 役職・成果の事実に基づき段階化。自己申告のみは不可 |
志望の整合 | 希望票の志望理由、担任面談、入学確約の意思 | 10点 | 学部の学びとの一致、面接・書類の準備状況 |
配点は例です。採点者を複数にし、所見欄を設けておくと、結果説明や推薦書の作成に活用できます。
資料3:生徒向け 校内募集要項の通知文例
「第3学年の生徒および保護者の皆様へ。本校に推薦の枠が示された大学・学部の一覧を別紙のとおりお知らせします。希望する生徒は○月○日(○)までに希望票を担任へ提出してください。選考は本校『指定校推薦に係る校内選考規程』および別紙の評価表に基づき、選考委員会で行います。推薦者となった場合は合格時に入学することが前提です。各大学の推薦要件は別紙でご確認ください。」
資料4:選考結果の通知文例
推薦者向け:「校内選考の結果、あなたを○○大学○○学部への推薦者として決定しました。○月○日(○)までに保護者の方との面談日程を調整してください。推薦決定後も学習・生活面で本校の推薦にふさわしい状態を保つことが求められます。」
推薦者とならなかった生徒向け:「校内選考の結果、今回は○○大学○○学部への推薦者としての決定には至りませんでした。評価の内容について説明を希望する場合は、○月○日(○)までに担任へ申し出てください。今後の進路は担任・進路指導部が引き続き相談に応じます。」
資料5:高1・高2向けの事前説明のポイント
- 指定校推薦は「大学が高校に枠を示す→校内で選考する」仕組みで、枠の有無・人数は年度により変わること
- 校内選考では評定平均が主な材料となり、1年次からの成績と出欠・提出物などの記録が積み上がること
- 合格した場合は入学が前提となるため、進路を十分に考えてから希望すること
- 基準は規程と評価表で示され、申し出の窓口があること
ケース別の判断
評定平均が同点で並んだ:規程の「同点の場合」に基づき、志望学部関係教科の評定→出欠→合議の順で判断し、根拠を議事録に残します。
評定は高いが欠席が多い:大学の推薦要件に欠席日数の上限があれば、まずそれを確認します。要件を満たす場合は評価表の出欠の配点で扱い、病気等の事情は記録に基づき委員会で考慮の可否を判断します。口頭で「不問」と決めない運用が公平性の要です。
部活動の実績をどう扱うか:表彰記録や大会結果などの事実で確認し、評価表の配点の範囲内で加点します。実績で学習成績の差を逆転させる運用は、学校推薦型選抜が「調査書を主な資料としつつ」評価・判定される入試方法であることを踏まえ、慎重に扱います。
推薦決定後に成績が下がった:規程の「推薦後の取り扱い」に基づき、まず本人・保護者と面談し、改善の見込みを確認します。取り消しは委員会の審議を経て行い、進路の再設計を同時に進めます。大学への出願後であれば、大学への連絡も必要です。
辞退の申し出があった:文書で受理し、理由と時期を記録します。繰り上げは次点者から期限を定めて意思確認し、出願期日に間に合うかを最優先で判断します。大学出願後の辞退は以後の推薦枠に影響し得ることを、事前説明の段階で伝えておきます。
よくある質問
Q. 校内選考の基準は公開しなければなりませんか?
A. 公開を義務づける規定は実施要項にはありませんが、観点と配点を事前に示すことは、結果への納得と説明責任の両面で推奨されます。少なくとも選考の観点・順序・申し出の窓口は、募集の公示時に文書で示すのが一般的な運用です。
Q. 校内選考で落ちる主な理由は何ですか?
A. 多くは、大学の推薦要件(評定平均の基準等)を満たしていないか、希望者が枠を上回り評価表の合計で下回ったかのいずれかです。「今回の枠では推薦者にならなかった」と伝え、第2希望の枠や他の選抜方式への切り替えを一緒に検討します。
Q. 面接がない指定校推薦もありますか?
A. 実施要項は学校推薦型選抜で面接による評価を必ず行うとしつつ、非公募型で入学を確約して受験するものは「大学の実情に応じて面接の要否を判断することができる」としています。有無は大学ごとに募集要項で確認し、実施される場合は校内で模擬面接の機会を設けてください。
まとめ
指定校推薦の校内選考は、「出身高等学校長の推薦」を誰に与えるかを高校が決める手続きであり、その公平性は、基準の文書化・複数人による判定・理由の説明・記録の保存によって担保されます。大学の推薦要件を入口とし、評定平均を主とする評価表で順位づけを行い、同点・辞退・繰り上げの扱いまで規程に定めておけば、希望者が重なった年でも一貫した説明ができます。規程と評価表は募集の公示前に整えておき、11月1日以降の出願に向けて準備を進めてください。
参考・出典
- 文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」(令和8年5月27日 8文科高第318号) https://www.mext.go.jp/content/20260529-mxt_daigakuc02-000005144_1.pdf(確認日:2026年9月)
- 文部科学省「入学者選抜実施要項」 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1346785.htm(確認日:2026年9月)
※ 本記事は2026年9月時点の公表情報に基づいています。校内選考の運用は各高等学校の裁量で定められるものであり、本記事の規程・評価表・文例は一般的な運用例です。推薦要件(評定平均の基準値、欠席日数、面接の有無等)は大学ごとに異なるため、必ず2027年度(令和9年度)の募集要項でご確認ください。最終更新:2026年9月


