年内入試の中心となる2つの選抜方式
年内入試(9〜12月に合否が出る入試)の中心となるのが「総合型選抜」と「学校推薦型選抜」です。どちらも一般選抜より早く進路が決まる魅力的な方式ですが、制度上の最も大きな違いは、「学校長の推薦が必要かどうか」という出願の入口と、出願・合格発表の標準日程にあります。一方で、評定平均の要件、専願か併願か、どのような書類・試験で評価するかは、方式によって一律に決まるものではなく、各大学が募集要項で個別に定めるルールです。「総合型だから評定は不問」「推薦だから専願」といった思い込みのまま出願先を選ぶと、「専願だと知らずに併願して辞退トラブルになる」「評定が足りず出願自体ができない」といった事故につながりかねません。
本記事では、両者の違いを大きな比較表で一望できるように整理したうえで、総合型選抜・学校推薦型選抜(公募制・指定校制)のそれぞれを詳しく解説します。さらに「どの生徒にどちらを勧めるか」の指導の判断軸、2027年度(令和9年度)入試から始まる面接の原則必須化の影響、進路指導の現場でよく出る質問への回答までを、教員の先生方と受験生・保護者の双方に向けてまとめました。
まず全体像:2つの「年内入試」はここが違う
総合型選抜と学校推薦型選抜は、どちらも「学力試験一本で合否を決めない」「年内に結果が出る」という共通点を持ちます。しかし、その入口(出願資格)と評価の重心はまったく異なります。ざっくり言えば次のとおりです。
- 総合型選抜:高校長の推薦は不要。生徒本人が「自己推薦」の形で、大学が掲げるアドミッション・ポリシー(求める学生像)に自分が合っていることをアピールする方式。志望理由書・小論文・面接・プレゼンテーションなどで多面的に評価される。
- 学校推薦型選抜:在籍する高校の校長の推薦が必須。多くの大学で評定平均(学習成績の状況)が出願要件となり、高校での成績・活動が土台になる方式。さらに「公募制」と「指定校制」の2種類に分かれる。
規模で見ると、文部科学省の集計では学校推薦型選抜の入学者数は総合型選抜のおよそ2倍にのぼり(2024年度:学校推薦型選抜 約214,549人/総合型選抜 約98,520人)、いずれも私立大学を中心に拡大が続いています。年内入試全体で入学した生徒の割合は、令和6年度で私立59.3%・公立30.5%・国立18.5%と、私立では約6割に達します。もはや年内入試は「一部の生徒のための特別ルート」ではなく、進路指導の主戦場のひとつです。
【比較表】総合型選抜と学校推薦型選抜の違い一覧
両者の違いを、指導で確認すべき順に並べた比較表です。生徒面談の際は、この表を上から順にチェックしていくと、出願方式の当たりをつけやすくなります。
比較項目 | 総合型選抜 | 学校推薦型選抜 |
|---|---|---|
高校長の推薦 | 不要(自己推薦) | 必要(校長推薦が前提) |
出願時期の目安 | 原則9月1日以降 | 原則11月1日以降 |
合格発表の目安 | 原則11月1日以降 | 原則12月1日以降 |
評定平均の要件 | 不問の大学も多い(設ける大学もある) | 基準を設ける大学が多い(例:3.5/4.0以上) |
公募制/指定校制 | 区別なし(誰でも出願可) | 公募制=どの高校からでも可/指定校制=指定された高校のみ |
専願/併願 | 専願中心(併願可も増加) | 指定校制は原則専願/公募制は併願可の大学も |
主な評価方法 | 志望理由書・小論文・面接・プレゼン・活動実績で多面評価 | 調査書・推薦書+面接・小論文・教科テスト 等 |
合格しやすさの傾向 | 大学・学部により差が大きい | 指定校制は合格率が高い傾向/公募制は競争あり |
向いている生徒像 | 学びたいテーマが明確/探究・課外活動の実績がある | 評定平均が高い/日々の学習を安定して積み上げてきた |
※時期は文部科学省の入学者選抜実施要項に基づく標準日程で、実際の日程・要件は大学および年度により異なります。2027年度入試の詳細は各大学の最新の募集要項をご確認ください。
総合型選抜とは(自己推薦・多面評価の入試)
総合型選抜は、旧「AO入試」を発展させた方式で、高校長の推薦を必要とせず、生徒本人が自己推薦の形で出願します。最大の特徴は、大学ごとに掲げられたアドミッション・ポリシー(求める学生像)との適合を、書類・小論文・面接・プレゼンテーションなどで多面的に評価する点にあります。「この大学・この学部でこそ学びたい」という志望動機や、そこにつながる高校時代の探究・課外活動の積み重ねが評価の中心になります。
評価される力と提出物
総合型選抜では、いわゆる学力の3要素――「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」――をバランスよく見ようとします。具体的には次のような要素で構成されることが多いです。
- 志望理由書・活動報告書:なぜこの大学・学部なのか、高校時代に何に取り組んだかを言語化する。総合型選抜の土台となる書類。
- 小論文・課題レポート:与えられたテーマや資料に対して、自分の考えを論理的に記述する力を評価。
- 面接・プレゼンテーション・口頭試問:志望動機や学びへの意欲、思考の深さを対話形式で確認。近年はプレゼンやグループディスカッションを課す大学も増加。
- 調査書:評定平均を出願要件にしない大学でも、活動歴・学習歴の資料として参照される。
時期・専願併願・評定の扱い
出願は文部科学省の実施要項で原則9月1日以降、合格発表は原則11月1日以降と定められています。学校推薦型選抜より一足早くスタートするため、夏休みの過ごし方が準備の勝負どころです。専願(合格したら必ず入学)を条件とする大学が中心ですが、近年は併願を認める大学も増えています。評定平均については「不問」とする大学が多い一方、出願要件として一定の基準を設ける大学もあるため、必ず各大学の要項で確認してください。国公立大学の総合型選抜は第一志望を前提とする専願制が多い点も押さえておきましょう。
学校推薦型選抜とは(公募制・指定校制)
学校推薦型選抜は、在籍する高校の校長の推薦を受けて出願する方式です。日々の授業・定期考査を通じて積み上げた評定平均(学習成績の状況)が土台になり、多くの大学で「3.5以上」「4.0以上」といった基準が出願要件として設けられます。高校3年間の学習を安定して積み重ねてきた生徒に向いた方式で、大きく「公募制」と「指定校制」の2種類に分かれます。
公募制(公募推薦)
公募制は、大学が定める出願条件(評定平均・部活動・資格など)を満たし、かつ高校長の推薦があれば、どの高校からでも出願できる方式です。指定校制と違って高校が限定されないため出願者が多く、その分競争が生じ、指定校制ほど「受かれば安心」とは言えません。一方で併願を認める大学もあり、他大学や一般選抜と組み合わせやすいのが強みです。評価は、調査書に加えて小論文・面接・教科試験などで行われるのが一般的です。第一段階で小論文や教科テストを課し、通過者に面接を行う二段階方式の大学も多くあります。
指定校制(指定校推薦)
指定校制は、大学が「この高校に何名」という形で枠を割り当てた高校の生徒だけが出願できる方式です。まず高校内で校内選考が行われ、評定平均などをもとに推薦者が決まります。校内選考を通れば合格率は非常に高い傾向にありますが、そのぶん原則として専願(合格したら必ず入学)であり、辞退は高校と大学の信頼関係に関わるため強く戒められます。「合格しやすいから」という理由だけで安易に勧めるのではなく、本当に第一志望として納得しているかを面談で丁寧に確認することが指導上きわめて重要です。
学校・塾の先生方へ
総合型・学校推薦型選抜の小論文・面接・学力型(基礎学力テスト型)の演習教材づくりには、指導者向けソフト「Xam(イグザム)」と「センターTen」が役立ちます。必要な問題を内容から検索し、Word出力で短時間に演習プリントへまとめられます。
- Xam:全国最大約300大学・全12科目の入試問題(一般選抜)から、同レベル・同形式の類題を抽出してテストを自動作成。2026年リニューアルで「総合・小論文」を刷新し、小論文・学力型対策の教材づくりにも活用できます。
- センターTen:共通テスト+センター試験37年分の過去問から、共通テスト形式の演習教材を量産。共通テスト利用型の推薦・総合型を狙う生徒の対策にも。新課程「情報Ⅰ」対応。
▶ Xam・センターTenの無料体験版お申し込みはこちら(製品ページへ)


どの生徒にどちらを勧めるか(指導の判断軸)
出願方式選びは「合格しやすさ」だけで決めるものではありません。生徒の評定平均・活動実績・志望の明確さ・併願方針の4点を整理すると、どの方式が軸になるかが見えてきます。面談で使えるチェックリストとして活用してください。
- 評定平均が高く、第一志望が1校に定まっている:指定校制が最有力(合格可能性が高い)。ただし専願前提のため「本当にここでいいか」を必ず確認。公募制も併せて検討。
- 評定は十分だが、複数校を比較しながら決めたい:併願可の公募制を軸に。他大学・一般選抜と組み合わせる。
- 探究・課外活動の実績が豊富で、学びたいテーマが明確:総合型選抜が活きる。アドミッション・ポリシーと自分の経験を結びつけられるかが鍵。
- 評定はやや不足するが、意欲・行動力・表現力がある:評定を問わない総合型選抜にチャンス。志望理由書と面接・プレゼンで勝負する。
- 年内入試と一般選抜を両立させたい:併願可の総合型・公募制を選び、年内の書類・小論文対策と年明けの学力対策のスケジュールを両立させる。
いずれの場合も、「専願か併願か」「評定要件を満たすか」を最初に確認することが事故防止の第一歩です。ここを外すと、出願直前になって方式を組み替える羽目になります。
▶ 小論文・面接・学力型の演習教材づくりに! Xam の無料体験版お申し込みはこちら(製品ページへ)
2027年度はどちらも「面接が原則必須」に
2027年度(令和9年度)入試における最大の変更点が、総合型選抜・学校推薦型選抜の「面接による評価の原則必須化」です。文部科学省は2026年5月27日付で「令和9年度大学入学者選抜実施要項」を通知し、両選抜において原則として面接による評価を行うことを求めました。
- 面接の範囲は広い:ここでいう「面接」には、個人面接だけでなくディベート・集団討論・プレゼンテーション・口頭試問が含まれ、オンラインでの実施も認められます。
- 例外がある:高校との緊密な連携で丁寧なマッチングが図られている非公募型の学校推薦型選抜で、かつ合格時の入学を確約して受験するもの(=指定校制のような形態)については、大学の実情に応じて面接の要否を判断できます。
- 猶予期間:導入が難しい区分についても、遅くとも2029年度(令和11年度)入試までに面接を導入することとされています。
背景には、一部の総合型・推薦入試で「面接などの配点を著しく低くし、学力試験の結果でほぼ合否を決める」事例が「一般選抜の前倒し」として問題視されたことがあります。つまりこの変更は、年内入試を本来の“多面的評価”へ引き戻す方向のものです。
現場への示唆は明確です。方式選び(総合型か学校推薦型か)と並行して、面接・小論文・プレゼンといった多面的評価への対策を早期に組み込む必要があります。とくにこれまで学力テスト中心で選抜してきた大学・学部でも面接が加わる可能性があるため、志望校の2027年度要項が出たら評価方法の変更を必ず確認し、指導計画に反映させましょう(面接指導の具体は関連記事「面接指導(面接必須化対応)」、変更点の全体像は「2027年度 年内入試の変更点」もあわせてご覧ください)。
指導のよくある質問(Q&A)
Q. 総合型選抜と学校推薦型選抜は両方受けられますか?
制度上は併願可能な組み合わせもありますが、それぞれが専願か併願かによります。指定校制や専願条件の総合型は「合格したら入学」が前提のため、他方式との併願はできません。まずは各方式・各大学の専願/併願条件を確認したうえで、両立できる組み合わせかを判断してください。
Q. 評定平均が足りない生徒はどうすればよいですか?
学校推薦型選抜(特に指定校制・多くの公募制)は評定要件で出願できないことがあります。その場合は、評定を問わない総合型選抜が現実的な選択肢になります。志望理由書・小論文・面接・プレゼンで評価される方式なので、活動実績と表現力で挑む戦略に切り替えましょう。
Q. 指定校推薦は「受かって当然」と生徒に伝えてよいですか?
合格率が高い傾向は事実ですが、専願・辞退不可という重い前提があります。「受かりやすいから」という理由だけで勧めると、入学後のミスマッチや辞退トラブルの原因になります。第一志望としての納得感を面談で必ず確認してください。
Q. いつから準備を始めればよいですか?
総合型選抜は出願が原則9月以降のため、高3の1学期〜夏休みが準備の山場です。志望理由書・小論文・面接は一朝一夕には仕上がらないため、早期に着手するほど有利です。学校推薦型(公募制)の教科テスト・小論文対策も、秋の出願に向けて夏から演習を積むのが理想です。
Q. 学力型(基礎学力テスト型)の総合型・推薦とはどう違いますか?
近年は英語+国語または数学などの基礎学力テストで年内に合否を出す方式も広がっています。これは「学力で年内に決める」ルートで、本記事の多面評価型とは対策の中心が異なります。詳しくは関連記事「年内学力型・基礎学力型対策の授業設計」をご覧ください。
まとめ
総合型選抜は「自己推薦・多面評価・テーマ重視」、学校推薦型選抜は「校長推薦・評定重視・指定校は高合格率(ただし専願)」が基本の違いです。指導では、①評定要件を満たすか ②専願か併願か ③志望が明確か ④活動実績があるか――の順で確認すると、生徒に合う方式が絞り込めます。さらに2027年度からは面接が原則必須化されるため、方式選びと並行して面接・小論文・プレゼンの対策を早めに組み込むことが、これからの年内入試指導の要になります。比較表を面談ツールとして活用し、生徒一人ひとりに最適な出願方式を一緒に選んでいきましょう。
※本記事のデータは2024〜2026年度時点の公表値、制度・変更点は2027年度入試(令和9年度)に関する情報に基づきます。出願・合格発表の時期や評定要件、専願/併願の可否、評価方法は大学および年度により異なるため、必ず各大学の最新の募集要項をご確認ください。
出典:文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」「入学者選抜実施要項」(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1346785.htm)、文部科学省「総合型選抜の出願時期・合格発表時期」(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/koudai/detail/1402208.htm)、河合塾Kei-Net「公募型年内入試で面接必須に」(https://www.keinet.ne.jp/teacher/report/kjreport/26/260528.html)および「拡大する総合型選抜と学校推薦型選抜」(https://www.keinet.ne.jp/exam/basic/structure/recommend.html)、リセマム「推薦・総合型『面接必須』文科省が変更通知」(https://resemom.jp/article/2026/05/28/86204.html)、大学ジャーナルオンライン(https://univ-journal.jp/997587/)、旺文社パスナビ「総合型選抜・学校推薦型選抜 合格ナビ」(https://passnavi.obunsha.co.jp/suisen/)ほか。

