年内入試(総合型選抜・学校推薦型選抜)では、合格発表から入学手続の締切までの期間が短く、一般選抜の合格発表よりも前に入学金の納入期限が来る場合があります。生徒・保護者から、「いつ、いくら必要ですか」「辞退したら戻りますか」と聞かれたときに先生として把握しておきたいことは、お金が発生する順序、入学金と授業料等の返還の扱いの違い、延納や公的支援の有無に関する出願前の確認の3点です。
本記事では、文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」に基づく日程と入学手続の考え方、最高裁判決の要旨、高等教育の修学支援新制度の概要を整理し、生徒・保護者向けの説明用シートと面談チェックリストをまとめました。納入額・締切・延納の可否は大学ごとに異なるため、個別の事案については、各大学の2027年度(令和9年度)募集要項でご確認ください。
現場の課題
お金の話は家庭の事情に直結するため、生徒からは切り出しにくく、保護者は合格後に初めて納入期限を知って慌てることがあります。先生が制度の枠組みを説明できれば、家庭が出願前に資金計画を立てる時間を確保することにつながります。
年内入試の合格から入学手続まで|お金が発生するタイミング
費用は、出願時の「入学検定料(受験料)」、合格後の入学手続時の「入学金」、その後の「授業料等」の順に発生します。文部科学省の実施要項は、年内入試と一般選抜の日程を次のように定めています。
- 学校推薦型選抜:「入学願書受付を令和8年11月1日以降とし、その判定結果を令和8年12月1日以降で一般選抜の試験期日の10日前まで」に発表する
- 総合型選抜:「入学願書受付を令和8年9月1日以降とし、その判定結果を令和8年11月1日以降に発表する」
- 一般選抜:試験期日は「令和9年2月1日から3月25日までの間」、合格者の決定発表は「令和9年3月31日まで」
また、各大学は「入学検定料その他入学に要する経費の種類・額やその納入手続・期限など入学志願者が出願等に必要な事項」を記述した募集要項を、「令和8年12月15日までに発表する」とされています。つまり、入学金の額と納入期限は、出願前に募集要項で確認できることが原則であり、締切そのものは大学ごとに異なります。月別の動きについては、【2027年度】高3生の年内入試スケジュール完全版|出願〜合格の月別タイムラインをご覧ください。
入学金と授業料等の違い|辞退したときの返還の扱い
最高裁判決の要旨(2006年(平成18年)11月27日)
最高裁判所は2006年(平成18年)11月27日、学納金返還請求事件の判決で、おおむね次の考え方を示しました。
- 入学金は、学生が大学に入学し得る地位を取得するための対価としての性質を持ち、その後に在学契約が解除されても、大学は原則として返還義務を負わない。
- 授業料等は、在学契約の解除の意思表示が3月31日までにされた場合、原則として大学に生ずべき「平均的な損害」は存在せず、返還しない旨の特約は無効となる。一方、4月1日以降に解除された場合、初年度に納付すべき範囲内の授業料等は原則として返還されない。
この判決は個別の事情のもとで判断されたものであり、すべての事案に同じ結論が当てはまるとは限りません。個別の事案については、大学の規定・募集要項・入学手続要項で確認し、必要に応じて消費生活センター等の相談窓口をご案内ください。
実施要項が大学に求めている取扱い
実施要項では「第10 募集要項等」の「2 入学手続」で、入学料(本記事でいう入学金)以外の学生納付金について、「合格発表後、短期間内に納入させるような取扱いは避ける」と定められています。また、入学辞退者への授業料等の返還の申出期限について、募集要項や入学手続要項に記述するなどして明確にするよう求めたうえで、次のように定めています。
- 「3月31日までに入学辞退の意思表示をした者(専願又は学校推薦型選抜(これに類する入学試験を含む。)に合格して大学等と在学契約を締結した受験者を除く。)については、原則として、受験者が納付した授業料等及び諸会費等の返還に応じる」
注意したい点は、専願や学校推薦型選抜の合格者は、3月31日までの辞退であっても、授業料等の返還の原則から除かれている点です。専願や学校推薦型選抜で合格した生徒には、授業料等も返還されない可能性があることを前提に説明する必要があります。
さらに実施要項では、学生納付金について「納付が困難な学生に対しては、独自の減免又は分割納入、納付時期の猶予等の措置を積極的に講じるよう努め、これらの措置の具体的内容を募集要項等に明記する」と定められています。また、文部科学省は、2025年(令和7年)6月26日付の高等教育局私学部長通知「私立大学における入学料に係る学生の負担軽減等について」の考え方等を示したページで、「納付時期を複数回設定したり、納付を猶予したりすること」「入学料の納付期限を後ろ倒しすること」「入学料の全部または一部を返還すること」などを取組の例として挙げています。延納や返還の取扱いは大学ごとに異なるため、前年度ではなく最新の募集要項で確認するよう、生徒に伝えてください。
併願時の資金計画|締切の前後関係と延納
年内入試と一般選抜を併願する家庭がある場合には、次の順に整理して説明することで見通しが立ちます。併願ルールの指導については、年内入試×一般選抜 併願者の指導の進め方|専願・併願ルールと両立プランをご覧ください。
- 締切の前後関係を整理してもらう:年内入試の合格校の入学手続締切(合格発表から短期間で設ける大学もあれば、年明けまで期間を設ける大学もあります)と、一般選抜の合格発表日(2月〜3月)を1枚に並べてもらいます。締切が一般選抜の合格発表より前であれば、入学金を納入して合格の権利を保持するか、辞退するかの判断が必要です。
- 延納・分割納入の制度の有無を調べてもらう:一般選抜の合格発表まで入学金以外の納入を待つことができる延納や、入学金の分割納入を設ける大学があります。制度の有無・申請期限・対象者の条件は、大学ごとに異なります。
- 複数校の入学金を納める可能性を伝える:年内入試の合格校の入学金を納入した後に、一般選抜で第一志望の大学に合格した場合、先に納めた入学金は原則として返還されません。その負担を受け入れるのか、年内入試の出願先を納得できる大学に絞るのかについて、出願前に家庭で話し合っておくよう促します。
- 家庭への説明の時期を決める:高3の夏の三者面談で費用の全体像を示し、出願直前(学校推薦型選抜は10月、総合型選抜は8月〜9月)に納入額と締切を確認する二段構えが現実的です。高1・高2の進路ガイダンスでも費用に触れておくと、高3での話し合いが円滑になります。
公的支援|高等教育の修学支援新制度と申込時期
高等教育の修学支援新制度は、授業料・入学金の免除または減額と返還を要しない給付型奨学金の2本柱で、授業料・入学金の減免は対象校(確認大学等)が、給付型奨学金は日本学生支援機構が実施しています。
- 対象:住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯。2024年度(令和6年度)からは、世帯年収約600万円(目安)までの多子世帯や、私立の理工農系の学部等の学生にも対象が拡充され、2025年度(令和7年度)からは、多子世帯(3人以上の子を扶養する世帯)の学生について、所得制限なく、国が定める一定額まで授業料・入学金が減免されています。
- 減免の上限額:文部科学省の高校生向けリーフレット(2027年度進学予定者向け)では、私立大学は授業料(年額)約70万円・入学金約26万円、国公立大学は授業料(年額)約54万円・入学金約28万円とされています。
- 給付型奨学金:日本学生支援機構の公表では、私立大学に自宅外から通う場合の最も支援額の大きい区分で月額75,800円など、支援区分・国公立/私立・自宅通学/自宅外通学の別により月額が異なります。
- 申込時期:進学前に高校を通じて申し込む予約採用の入学前申込期間は、同リーフレットで「2026年4月下旬~7月末」とされ、締切は学校ごとに異なります。予約採用で申し込まなかった場合も、進学後に在学採用で申し込むことができます。
- 納付猶予:実施要項は、制度の利用を希望する学生について、「申請してから支援対象者としての認定を行うまでの間、各校において授業料の納付を猶予することを原則としており、適切に取り扱うこと」と定めています。
減免の認定が入学後になる場合の入学手続時の取扱いは、大学ごとに異なります。対象校かどうかと入学手続時の納入方法については、進学先の大学の学生支援窓口に直接確認するよう、生徒・保護者に促してください。
そのまま使える資料
資料1:生徒・保護者向け「年内入試のお金 説明用シート」
三者面談で配布することを想定した表です。
時期 | 発生する費用 | 確認すること |
|---|---|---|
出願前(高3の夏〜秋) | — | 募集要項の「入学に要する経費」の欄/延納・分割納入・減免の有無/修学支援新制度の予約採用の申込状況 |
出願時(学校推薦型選抜は11月以降、総合型選抜は9月以降) | 入学検定料(大学・方式ごと) | 出願校数分の合計/支払方法と期限 |
合格発表後(学校推薦型選抜は12月以降、総合型選抜は11月以降) | 入学金 | 納入期限(合格発表から何日後か)/辞退しても原則として返還されないことの理解/延納の申請期限 |
入学手続完了時〜3月 | 授業料・施設設備費・諸会費等 | 納入期限/3月31日までに辞退した場合の返還の扱い(専願・学校推薦型選抜の合格者は返還の原則から除かれる) |
入学後 | 後期授業料・教材費・住居費等 | 在学採用の申込時期/大学独自の奨学金 |
資料2:併願校ごとの入学手続締切・納入額の整理表
生徒1人につき1枚作成し、出願前と合格後に更新します。合格発表日の順に並べておくことで、入学手続の締切と一般選抜の合格発表の前後関係が一目で分かります。
大学・方式 | 合格発表日 | 入学金の納入期限 | 授業料等の納入期限 | 延納・返還の規定 |
|---|---|---|---|---|
例:B大学 総合型選抜(併願可) | 11月中旬 | ○月○日 | ○月○日 | 延納の申請期限:○月○日 |
例:A大学 学校推薦型選抜(専願) | 12月上旬 | 合格発表から○日以内 | ○月○日 | 延納なし/授業料等の返還規定を要確認 |
例:C大学 一般選抜(第一志望) | 2月下旬 | ○月○日 | ○月○日 | — |
資料3:面談での確認チェックリスト
- □ 出願予定校すべての2027年度募集要項で、「入学に要する経費」と納入期限を確認した
- □ 専願・併願の区分と、辞退時の授業料等の返還の扱いを保護者が理解していることを確認した
- □ 年内入試の合格校の入学手続締切と一般選抜の合格発表日の前後関係を、整理表で確認した
- □ 延納・分割納入・減免の制度の有無と申請期限を確認した
- □ 複数校の入学金を納める可能性と、その場合の家庭の判断について、保護者が把握していることを確認した
- □ 修学支援新制度の予約採用の申込状況(申込済み/未申込の場合は在学採用を案内)を確認した
ケース別の判断
ケース1:専願で合格したが、経済的な事情で辞退を考えている
辞退を決める前に、大学の学生支援窓口へ相談するよう促します。実施要項では、納付が困難な学生への減免・分割納入・納付時期の猶予等の措置を講じるよう努めることが大学に求められており、修学支援新制度の申請中は授業料の納付を猶予することが原則とされています。それでも進学が難しい場合は、専願の辞退が高校と大学の信頼関係に関わることを管理職と共有したうえで、大学の定める方法で速やかに意思表示を行います。
ケース2:年内入試で合格したが、第一志望の一般選抜の結果まで待ちたい
併願を認める方式であることが前提です。合格校の募集要項で延納制度の有無と申請期限を確認し、制度がない場合は、入学金を納入して合格の権利を保持するか、辞退するかを家庭が判断します。授業料等の返還の規定は大学ごとに異なるため、納入前に確認しておきます。
ケース3:延納を申請したい
延納は大学に申請して認められる制度であり、自動的に適用されるものではありません。募集要項または入学手続要項で、申請書の様式、提出期限、対象となる条件(併願先の受験を証明する書類を求める大学もあります)を確認し、締切に余裕をもって手続を終えるよう伝えます。延納の対象が授業料等に限られ、入学金の納入は求められる場合もあるため、対象となる費用もあわせて確認します。
ケース4:修学支援新制度の予約採用を申し込んでいなかった
進学後に在学採用で申し込むことができることを伝えます。ただし、入学手続時に減免前の額で請求される場合があるため、入学手続時の扱いについて進学先の大学に問い合わせるよう促します。
よくある質問
Q. 入学金は、いつまでに納めるのですか?
A. 大学ごとに募集要項で定められており、一律の期限はありません。実施要項が「合格発表後、短期間内に納入させるような取扱いは避ける」よう求めているのは入学料以外の学生納付金であり、入学金の納入期限は各大学の規定によります。
Q. 学校推薦型選抜で合格した後に辞退すると、授業料は返還されますか?
A. 実施要項では、3月31日までに辞退した場合の授業料等の返還の原則から、専願または学校推薦型選抜の合格者は除かれています。返還されない可能性があることを前提に、出願前に大学の返還規定を確認してください。
Q. 高1・高2の段階でできる準備はありますか?
A. 進路ガイダンスで「入学手続時にまとまった費用が必要になること」「修学支援新制度の予約採用は高3の春〜夏に申し込むこと」を伝えておくことが有効です。多子世帯の減免のように所得制限のない支援もあるため、早い段階で周知しておくことが申込漏れの防止につながります。
まとめ
年内入試のお金に関する説明の要点は、「入学検定料→入学金→授業料等」の順に費用が発生すること、入学金は原則として返還されず、授業料等は3月31日までの辞退であれば返還されることが原則であること(専願・学校推薦型選抜の合格者は除かれる)、延納・分割納入・減免の有無は大学ごとに異なること、修学支援新制度の予約採用は高3の春〜夏に申し込むことの4点です。この枠組みを出願前の面談で家庭と共有し、併願校ごとの締切と納入額を整理表にまとめておくことで、合格後に慌てずに進路を選ぶことができます。年内入試全体の仕組みについては、年内入試とは?大学受験の新しいスタンダードもあわせてご覧ください。
参考・出典
- 文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」(令和8年5月27日 8文科高第318号 高等教育局長通知) https://www.mext.go.jp/content/20260529-mxt_daigakuc02-000005144_1.pdf(確認日:2026年10月)
- 文部科学省「『私立大学における入学料に係る学生の負担軽減等について』(令和7年6月26日付文部科学省高等教育局私学部長通知)の考え方等について(令和8年3月13日更新)」 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/007/mext_03362.html(確認日:2026年10月)
- 裁判所「裁判例検索」最高裁判所第二小法廷 平成18年11月27日判決 学納金返還請求事件(平成17年(受)第1437号・第1438号)判決文 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/842/033842_hanrei.pdf(確認日:2026年10月)
- 裁判所「裁判例検索」最高裁判所第二小法廷 平成18年11月27日判決 学納金返還請求事件(平成16年(受)第2117号) https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=33841(確認日:2026年10月)
- 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/index.htm(確認日:2026年10月)
- 文部科学省「高等教育の修学支援新制度 高校生向けリーフレット(2027年度進学予定者向け)」 https://www.mext.go.jp/content/20260206-mxt_gakushi01-100001062-1-1koukou.pdf(確認日:2026年10月)
- 日本学生支援機構「給付奨学金(返済不要)」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/kyufu/index.html(確認日:2026年10月)
- 日本学生支援機構「給付奨学金の支給額」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/kyufu/kingaku.html(確認日:2026年10月)
- 東京都消費生活総合センター「大学に入学金を支払ったが、入学を辞退したので返金してほしい。」 https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/sodan/faq/main/306.html(確認日:2026年10月)
※ 本記事は2026年10月時点の公表情報に基づく、2027年度(令和9年度)入試向けの一般的な説明です。入学金・授業料等の額、納入期限、延納・返還の規定は大学ごとに異なるため、必ず各大学の2027年度募集要項・入学手続要項でご確認ください。判例は要旨の紹介であり、法律上の助言ではありません。個別の事案は、大学の窓口や消費生活センター等にご相談ください。修学支援新制度の金額・区分は、今後変更される可能性があります。最終更新:2026年10月




